2023.12.19

ゼロから生み出す多彩な美 設楽町IORI SPACE(イオリスペース)

IORI SPACE 辻昌生さん、順子さんご夫妻

名古屋から設楽町に移住し、趣味の木工が高じて、家具(IORI SPACE)・庭(NAGURAオープンガーデン、星庭等)・家(COHAKO)と、次々に美しいモノや空間を生み出す辻昌生さんにインタビュー。移住のきっかけや設楽町の魅力、製作の原動力などについてお伺いしました。

カンナとの運命的な出会い

大学卒業後、なんとなく父の家業を継いだものの、あまり好きではなかったその仕事。父が他界したことをきっかけに、このまま仕事を続けていくべきか、人生で初めて悩みました。そんな時、ホームセンターで目に飛び込んできたのが「すぐ使えるカンナ」。幼少の頃からものづくりは好きでしたが、「カンナ=職人さんしか使えないもの」と思っていたので即購入。試しに削ってみたところ、真っ黒だった木が真っ白に!そのことが原体験となり、木工にのめり込みました。

師匠は道具屋さん

丁寧に研がれた道具たち

趣味で始めた木工ですが、なぜか道具を研げば研ぐほど切れなくなる(笑)。本を読んだり、ホームセンターに通いながら独学で学びましたが、それでは限界がありました。ある日、たまたま出会った道具屋さんが、素人相手に手取り足取り教えてくれて……足繁く通ううちにだんだん研ぎのコツがわかるように。研いだ刃先を顕微鏡で確認してもらい、「なかなかよく研げているぞ」と言われたときは、嬉しかったですね。

影響を受けた人物は…

影響を受けたのは、ジョージ・ナカシマとハンス・ウェグナーです。ジョージ・ナカシマは、独特のテーブルや椅子を設計したアメリカ生まれ日系二世の家具デザイナー。日本・インド・アメリカで活躍し、木工の世界を広げてくれた人物です。
もう一人は、20世紀を代表するデンマークのハンス・ウェグナー。生涯で500種類以上の椅子をデザインした、まさに椅子づくりの巨匠。椅子は、テーブルのように物が置ければいいというものではなく、人の身体を預ける特別な家具。デザインの美しさだけでなく座り心地も求められます。「とても敵わない、椅子で勝負するのはやめよう」と思わされた作品です。

設楽町移住の決め手は「水」

設楽町は天竜川、矢作川、豊川という3つの河川の水源地

美しい水と緑に囲まれながら、大好きな木工で暮らしていきたい……探し求めて辿り着いたのが標高700mの高地、設楽町名倉地区。設楽町は天竜川、矢作川、豊川という3つの河川の水源地で、豊富な水に恵まれ、農業が盛んなまち。水にこだわったのは、ドラマ「北の国から」で、沢の水を引いたり、家を建てたりするのに強烈な印象を受けたから(笑)。後から一緒に住み始めた奥様の順子さんはこう言います。「沢の水は井戸の水と違って冬は冷たく、もちろんお湯は出ません。五右衛門風呂に汲み取り式トイレ……生活に不安を覚える間もなく息子二人を出産し、諦めがつきました(笑)。周りからは『跡取りができてよかったね』と言われましたが、好きなことをやるように言い続けて育てたら、二人ともそれを見つけて、さっさと家を出て行ってしまいました(笑)。夫は普請道楽なので、とりあえず建ててみて、よくないと思ったらすぐにリフォームします。私がごはんをつくっている後ろで壁を抜かれたり、暗いからと天井を抜かれたり(笑)。生活しながら住みやすさを追求していきました。」

無垢材を使用した家具づくり

昌生さんの作業風景
無垢材のウォールシェルフ

移住当初は、無垢材のテーブルなど大きな家具を個展で販売していましたが、ギャラリーや百貨店を介するより、直接お客様に販売したいと、ネットショップを立ち上げました。一年ほど経った頃からぽつぽつと注文が入るようになりましたが、高額な商品をネットで買うのはお客様にとっても勇気の要ること。妻が力持ちなので助かりましたが(笑)、テーブル一つでも50~60㎏あるので運ぶのも大変です。宅急便サイズであれば、山奥の我が家でも集荷に来てくれるので、ここ最近は壁掛け棚をメインにコンパクトな家具を製作しています。

「丸太購入」と「手ワザ」へのこだわり

家具屋さんは、手軽で扱いやすい製材から家具をつくることが一般的です。しかし、同じ木でも生まれた場所によって質感や色味は異なるもの。IORI SPACEでは、無垢材を丸太で購入し、自ら製材・乾燥させてから加工しています。また、ハンドメイドならではの手ワザを生かしたやわらかなフォルム、機械が苦手とする“ゆれ”のあるデザインを大切にしています。私が木に惹かれるのは、人となじむ素材の奥深さ・経年変化の美しさ。木の魅力を引き出すための労力は惜しみません。

ゼロから始める庭づくりのワクワク感

緑に囲まれたIORI SPACE
IORI SPACEのナチュラルガーデン

1989年に移住してまもなく庭をつくりはじめ、最初に植えたケヤキは街路樹ほどになって、我が家の入り口はケヤキとヤマザクラのトンネルになりました。約300坪の庭は上下に分かれ、上は周囲の山に溶け込むナチュラルガーデン、下は小部屋のように区切っています。地域交流を深めるため、6月にはガーデニング好きなご近所さんたちと「NAGURAオープンガーデン」を開催しています。
また、設楽町駒ヶ原地区にある麻野間園芸さんが、2024年春にオープンする観光ガーデン「星庭 駒ヶ原ガーデンビレッジ」をつくるお手伝いもしています。何もないところから「こういうことをしたい」と話を持ち掛けられるのが一番ワクワクしますね。今は、星庭とは違うコンセプトの“野っ原のような庭”を計画中です。

奥三河産材を使った持ち運びできる家

COHAKO PARK
COHAKO PARKのサウナ

「地元の木材を使って何か作れないか」という地域活性化の取組みをきっかけに、「ミニハウス COHAKO」を製作・販売しています。「木を加工する私にできることは何だろう」と考えた結果、奥三河産のスギやヒノキの無垢材を使った、トラックで運べるタイニーハウスが生まれました。気密性・断熱性に優れ、キッチン・トイレ・シャワーなどをつければスモールハウスとして十分使えます。COHAKOが体験できる施設「COHAKO PARK」には、バーベキュースペースやサウナハウスもあるので、ぜひ遊びに来てください。

インタビューを終えて・・・

星庭 駒ヶ原ガーデンビレッジ

設楽町に移住して30年以上、「ものづくり」から「建物・空間づくり」を経て、今は「まちづくり」に関心があるという辻さんご夫妻。星庭のガーデンウエディングスペースの設計、閉校した設楽町立名倉中学校の再生、ブドウ畑でワインをいただく野外レストランなど……夢は広がり、実現に向けて動き出しています。
次々に湧き上がるアイディアと実行力の源は「自分たちが住んでいる町だから、もっといい場所にしたい!」というシンプルな想い。「子どもが減り、このままだと限界集落になってしまう。だったら、人が来たくなるような魅力的な場をつくりたい。ここに住みたい!ここで働きたい!という同じ想いの人たちと設楽町を盛り上げていきたい」と熱がこもります。
移住者も多く閉鎖的な雰囲気がないため、とても住みやすいという設楽町名倉地区。
豊かな自然の中で、素敵なモノや空間に身をゆだね、地元の人々と対話をすることで、きっとあなたも魅力のとりこになるはず。
ぜひご自身で体感しに行ってみませんか。

関連リンク

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コラム著者

asCa

1976年生まれ、東京都出身。茶道師範。
人と言葉を愛しています。茶道・ダンス・旅行・キャンプが趣味。夫と娘の三人暮らし。

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