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懐かしい自分にリンクする

いなかの食卓を囲む 奥三河のあたたかさ

私が初めて奥三河を訪れたのは、2020年。東京から名古屋へ引っ越してきたばかりで、愛知県のことをまだ何も知らなかった。「愛知=名古屋」という先入観を抱いていた当時、奥三河の見渡す限りの自然に「愛知にこんな自然豊かな場所があるんだ」と驚き感動したことを今でもはっきりと覚えている。一度訪れて一気に奥三河のファンになった私は、その後、地域の観光発信や情報共有の強化を行う奥三河観光協議会ワーキングメンバーの一員になり、月に1度奥三河を訪ねるようになった。

奥三河を訪ねる際の一番の楽しみは「食」。
毎回、奥三河の自然の恵みを使った食が心身に浸みる。奥三河のきれいな空気と水で育った野菜はみずみずしく、東京や名古屋のスーパーには売っていないようなめずらしい旬の食材も多い。大きなしいたけや玉ねぎ、特産の鶏肉などがやさしい家庭料理になって食卓に並ぶ。奥三河の食はその「手料理感」も魅力だ。地域に根差した方が地元の食材を丹精込めて作ってくれるので、何とも言えないあたたかさを感じる。

その中でも特に、地元のおかあさん達の手料理が好きだ。

【写真】千代姫荘のおかあさん

「千代姫荘」では、地元のおかあさん、おばあちゃん達と話しながら田舎ならではのこんにゃく作り体験やそば打ち体験ができたり、囲炉裏を囲んで地元料理を楽しんだりすることができる。料理は、奥三河の山里ならではの美味しい食材がたくさん。

【写真】千代姫荘 本日のランチ

この日、一緒に参加したメンバーの一人が「このインゲン、美味しいな」とつぶやくと千代姫のおかあさんが「パリパリ王子っていうのよ。朝、畑からとってきたのよ。」と教えてくれ、ボウルに追加のインゲンがたっぷりと運ばれてきた。恥ずかしがり屋のおかあさん、おばあちゃんたちは、なかなか顔を出さないのに「まだあるよ~」と料理を次から次に出してくれた。「もうおなかいっぱい」と言っても、今度は違う野菜が出てくる、出てくる。

コロナ禍真っ只中に東京から単身で名古屋に転勤になった私。帰省も、祖父母を訪ねることもなかなかできなかった時期に、この時間が癒しになっていたことは間違いない。

【写真】ゲストが食卓を囲む様子

2021年の冬、実地調査という名目で訪れた体験型ゲストハウス「danon」は、築150年の古民家で、地域の人や暮らしに出逢える宿。その日泊まりに来たゲストと一緒に食卓を囲み、地域の旬の食材を使って共同調理をする。

【写真】夕飯はみんなで作るのがdanonの醍醐味

その日は、一緒に訪れたアメリカとタイのメンバーと茶碗蒸しに使う銀杏のから剥きをお手伝い。その日泊まりに来ていた地元の方がコツを教えてくれた。一人ではなかなかしない作業も、みんなでやると楽しくできるのが不思議。料理上手の代表・愛さんがお鍋や揚げ物、おかずをたくさん作ってくれて、今でも、あの日食べた沖縄料理が恋しくなる。

食後は、メンバーと世界共通のテーブルゲーム「ジェンガ」を楽しんだ。今回は人見知りの性分のため体験できなかったが、次回訪れる際は、民泊の醍醐味であるそこで出会う方との交流ももっと楽しんでみたい。近くに奥三河で人気の温泉「とうえい温泉花まつりの湯」があるので、天然療養泉といわれる「とうえいの湯」入浴剤をお土産に購入。疲れた冬の日の必須アイテムになった。

その他にもたくさん 奥三河のおかあさんの活動

【写真】つくしんぼうの会 ルバーブと苺のジャム

新城市のおかあさんたちの手作り!奥三河産のルバーブと苺のジャムが美味しい!お土産に買って、奥三河を思い出している。

【写真】いこいの里 五平餅作り体験

“御幣(ごへい)”の形を作るのが意外と難しい…。いこいの里のおかあさん達に手伝ってもらいながらの五平餅作りはファミリーにもおススメ。


私にとって、全く新しい出逢いだった奥三河。
けれども、なぜかどこか懐かしい。ただ毎日を生きることが楽しくて、田舎の祖父母の庭を駆け回っていたあの頃の自分にふとリンクする。心がじわっとあたたまる。少し休んで飛び立つトンボの止まり木のように、日々奔走する人を安心して休ませてくれる。奥三河のあらゆる人や動物、植物、何をとってもそう。奥三河には、日本のふるさとを感じるやさしい風が吹いている。

コラム by 原 百合香

株式会社ピコ・ナレッジ所属。
2020年より一般社団法人奥三河観光協議会ワーキングへ参加。奥三河各地を巡る。

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