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奥三河星空コラム

見えない星 ブラックホール

近年観測技術が上がって遙か100億光年先まで観測出来る様になって来ましたが、それでも見る事が出来ない星があります。
それがブラックホールです。
ブラックホールとはどんな存在なのでしょう?
一般に質量が太陽の約30倍以上の恒星が燃え尽き(正確には核融合ですが)超新星爆発を起こした後に残った物質が重力によって潰れて永久に縮み続けた結果、光さえ出られない程重力が大きくなった天体です。
大きな恒星が全てブラックホールになるわけではなく、太陽の約150以上の質量の恒星は、爆発力で粉々に砕けブラックホールにはならず、鉄より重い物質が作られます。
地球には鉄より重い物質、金や鉛ウランなどが在る事から巨大な恒星の爆発によって作られた残り物で出来ている事になりますね。

さて、光を出さない天体をどのように見つけるのでしょう?
宇宙の激しい現象からはX線が放出されると予測されていましたが、X線は地球の大気に吸収されて地表からは観測出来ないことから、1970年にX線観測衛星が打ち上げられ、4年間の観測でX線の発生源が中性子星や超新星の残骸やパルサーであることを突き止め、それらは規則正しい周期で強弱を繰り返す事が分かりました。

観測を続けると、はくちょう座の一角で他のとは違う不規則で激しく変化する天体が発見されて、分析の結果、約6,000光年の距離にある変光星からX線が出ている事が判明して、近くにある青色超巨星からガス成分が吸い込まれ、その際に極めて強いX線が出ていると推測されました。

二つの星の距離と回転を調べた結果、太陽の10倍以上の質量を持っているブラックホールの可能性が高いとして「はくちょう座X-1」と名付けられました。

はくちょう座X-1

ブラックホール本体は観測出来ないので、ガスなどを吸い込む時に出る強く不規則なX線を観測したり、近くの恒星の動き方や、重力によって曲げられて奥の星が歪でガラス玉を覗いた様に見える事によって場所の推測が出来る様になってきた結果、我々の天の川銀河の中心には太陽の約410万倍の質量がある巨大なブラックホールがある事も分かってきました。
地球から見ると、いて座の方向にあります。

ブラックホール

2019年にその存在を撮影したドーナッツ状の写真が有名になった、M87銀河の中心にあるブラックホールは太陽の約65億倍の質量があるといわれています。
黒い部分は光さえ出て来られない部分で本体はもっと小さいと推測され、周りのドーナッツ状になっている明るい部分は高温のガスが回転して地球の方向に向かっている部分で、遠ざかっている部分が暗くなっている結果明暗差があります。

これらの巨大ブラックホールは最初に紹介した「はくちょう座X-1」の様な恒星がブラックホールになったのとは違い、宇宙の誕生1秒以内のまだ高温高圧であった時に出来たと推測されています。
巨大ブラックホールと銀河
ほとんどの銀河の中心には巨大ブラックホールがあることが観測でわかってきましたが、ブラックホールのない銀河もあるので関係性はわかっていません。
ただし、ブラックホールのある銀河では恒星の形成が活発なので、巨大な重力でガスが集まり、時には活発になり高いエネルギーを放出して、星の形成を促しながら銀河と一緒に成長したと考えられています。

中はどうなっているのか?
ブラックホールの中は現在分かっていません。
一点に集まっているのか?均等に広がっているのか?違う次元に繋がっているのか?
科学者達の見解は一致していません。
量子力学的には11次元に折りたたまれた有限の大きさを持っている星となっています。
最近二つのブラックホールが合体したら、体積も大きくなったとの観測結果も報告されていますが、まだまだ未知の天体ですので、皆さんの考えの中に正解があるかも知れませんね。


コラムby 奥三河星空案内人 大矢 浩一
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#ブラックホール