ヘルクレス座はアルファベットの「H」と「K」を足したような形をしています。
この星座を見つけるためには、まず夏の大三角を形作る星の一つ「こと座のベガ」を探しましょう。後は、ベガと、夏の天の川の西側辺りを探すことになります。
ベガの近くはヘルクレスの足、南に下って身体、そして頭、何故か逆立ちをしています。
頭に輝く星の名前はラスアルゲティ(Rasalgethi)という3等星です。
ギリシャ神話の英雄と言うからには、それはそれは輝かしい星々で出来ていると思いがちですが、実は明るい1等星は一つもありません。星座を作っているのは3等星が6個、後は4等星より暗い星となります。
ラスアルゲティの近くには、へびつかい座の頭の星ラスアルハゲー(Rasalhague)という2等星があります。まずは明るく光り輝くラスアルハゲーを見つけ、並ぶように輝くラスアルゲティを探してみても良いかもしれません。

星座の見つけ方でお話をしたラスアルゲティは、ヘルクレス座の頭に輝く３等星の二重星で、「ひざまずく者の頭」という意味があります。

球状星団は、10万から100万程の恒星が狭い範囲にボール状に集まった天体です。
M13は球状星団の中ではとても明るく、夏の星の観察会において望遠鏡で見られる天体の定番です。

それでは、ヘルクレスにまつわるお話をさせていただきます。

天の川は英語でMilky Way(ミルキー　ウエイ)。日本語で「ミルクの道」という意味ですね。この名前は、ヘルクレスにまつわるギリシャ神話からその由来が来ていると言われています。
神々の王ゼウスは数々の浮名を持つ神としても知られています。
ある時ゼウスは人間の娘アルクメーネとの間にヘルクレスを儲けてしまいます。
ゼウスの正妻で大変嫉妬深い女神ヘラはもちろん面白くありません。
しかし我が子を立派な支配者にしたいと考えたゼウスは、飲んだものを不死身に変えるというヘラの母乳をヘルクレスに飲ませようとします。
そして、ある時寝ているヘラのもとにヘルクレスを連れて行き、母乳を飲ませ始めます。
それに気づいて目を覚ましたヘラが、ヘルクレスをはらいのけたところ、こぼれ落ち宙に舞った乳がMilky Way(ミルクの道)になったという事です。

面白くないヘラは、赤ん坊のヘルクレスの寝所へ2匹のヘビを放ちます。
しかしヘルクレスはそのヘビを手でつかみ、赤ちゃんとは思えない怪力で締め殺してしまいました。

二人の因縁はまだまだ続きます。
大人になったヘルクレスは、ある時ヘラにそそのかされ、自分の妻メガラーと、3人の子どもを殺してしまいます。
正気に戻ったヘルクレスは、罪を償うため、古代ギリシャの聖域デルポイに赴き、信託を受けます。
この信託によって、ヘルクレスは古代都市ミュケーナイの王エウリュステウスに仕え、12の難行(12の功業)を果たすことになったのです・・・。

12の難行にはそれぞれの物語があり、中には別の星座の生まれるきっかけとなったものもあります。
1.ネメアの獅子退治(しし座)
2.レルネーのヒュードラ退治(うみへび座 かに座)
3.ケリュネイアの鹿の生け捕り
4.エリュマントスの猪の生け捕り(いて座)
5.アウゲイアスの家畜小屋の掃除
6.ステュムパリデスの鳥退治
7.クレタ島の牡牛の生け捕り
8.ディオメーデースの人食い馬の生け捕り
9.アマゾーンの女王の腰帯
10.ゲーリュオーンの牛の生け捕り
11.ヘスペリデスの黄金の林檎の採取(りゅう座)
12.地獄の番犬ケルべロスの生け捕り

この12の難行以外にも数々の功績を残したヘルクレス。さすがギリシャ神話最大の英雄と呼ばれるだけありますね。
それぞれの物語は、またそれにまつわる星座のお話をする際にご紹介させていただきます。

夜空には、星とともに多くの神話がちりばめられています。
夏の夜、想いを馳せながらヘルクレス座を探してみてはいかがでしょうか。

コラムｂｙ 奥三河星空案内人　横幕 浩


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